遠く離れたミャンマーの自立支援に、一票を投じる日用雑貨 | ハニーマザー

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コラム

遠く離れたミャンマーの自立支援に、一票を投じる日用雑貨

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手に持った時に感じる、指に吸い付くようなフィット感にハッとする方、多数。

ハニーマザーの隠れたロングセラー、木製スプーン。最近、その仲間が増えていることにお気づきでしょうか?デザートスプーンにフォーク、バターナイフ、ハニーディッパー、さらにはお箸まで、どれも、持った時の指に吸いつくようなフィット感や、なめらかに磨き上げられた木肌の美しさに、こだわりが感じられるものばかり。これらの木製カトラリーに共通しているのは、ミャンマーの人々の自立を支援する活動から生まれたものであることです。今回は、その活動の主宰者であるNPO法人アジアクラフトリンク理事長・斉藤秀一さんにお話を伺いました。

助け合いの精神を忘れないミャンマーの人々に惹かれて

斉藤さんが率いるアジアクラフトリンクが拠点を置くのは新潟市。斉藤さんとミャンマーとの出会いは、1996年にさかのぼります。

「私はもともと食品関係の技術者で、当時東南アジアに住んでいたんです。ミャンマーを訪ねたのは偶然でしたが、自分が幼い頃の日本の田舎町を彷彿とさせるようで、魅了されたんですよね。ミャンマーは元来、豊かな自然や農作物に恵まれた国です。それが軍事政権の道を選んだことで、アジアの最貧国になってしまった。それでも人々の心はやさしく、2019年の調査では、ミャンマーはアメリカに次いで世界で2番目の寄付大国だということも明らかになったんですよ」

現地の知り合いや友人が増えるうち、彼らの真面目さや人を思う気持ちに惹かれていった斉藤さんは、「ものづくりを通じて現地の人々の手助けをしたい」と考えるようになります。

前列左端の男性が斉藤さん

木工の「ものづくり」で暮らしを豊かにするお手伝いを

そこで斉藤さんが目をつけたのは木工。ミャンマーには、木材を伐採し加工する産地が国内のあちこちにあり、従事者もたくさんいました。しかし、世界に売れる良質なプロダクトをつくるノウハウが現地にはなかったのです。斉藤さんは2012年にNPO法人アジアクラフトリンクを立ち上げ、本格的にものづくり支援に乗り出します。

「製品にして売れば、木材で輸出するのに比べて10倍の収益を地域に還元できます。そこで、古くからの木工の町バゴーという土地に、木工技術センターを設立しました。ここで日本のものづくりの技術を伝えて、世界マーケットに挑戦できるように支援したいと思ったんです」

木工品づくりで重要なのは、乾燥工程。生木には80%以上の水分が含まれますが、製品の曲がりや割れを防ぐためには、それを15%以下にしなければなりません。しかしミャンマーの木は材質が硬く締まっており、日本の木と比べて乾燥は容易ではないそう。スイッチひとつで自動乾燥できる高性能な機械を日本から持ち込むこともできなくはありませんが、斉藤さんは、それでは現地の自立につながらない、と考えました。

「年収100万円にも満たない現地の人々でも調達できるものでないと、再現性も継続性もないでしょう。それでかつお節の作り方にヒントを得て、木片をドラム缶でボイルしてからスモークするという方法を考えました。これなら地元にある資材で3万円程度で容易に自作できるうえに、乾燥具合も上々。難関だった箸も満足のいくレベルでつくれるようになったんです」

先端まで繊細に仕上げたお箸は、使い心地がよいだけでなく、佇まいまで品があってきれいです。

一生残る、技術力という支援

こうして乾燥させた木は、工房の人たちによってオールハンドメイドで切削と磨きをほどこされ、カトラリーに仕上げられます。乾燥工程だけでも大抵1ヶ月はかかり、それを削って磨くのは、慣れた人で1日で30〜40本こなせるかというところ。生木がカトラリーになるまでに想像以上の手間ひまがかかっていることがわかります。

「手間をかけて価値の高いものをつくってこそ意味があると思うので、仕上げの細かいところまで注文をつけていますよ。なんでそこまで?と思われることもあるかもしれないけれど、そのことを理解できる、熱意と努力と工夫のある人たちが集まってくれています」

現在、8軒のパートナー工房と提携。20代の若者を中心に、50〜60名の男女が働いています。

斉藤さんにとって重要なのは、お金や設備投資よりもむしろ、一生残る知恵と技術力を現地に根付かせていくこと。いずれは斉藤さんが手を離しても、現地の人々が自走していけるようにすることが、めざす自立支援の形です。

「最近はデザインの研修も始めていて、日本のデザイン専門学校の先生に講師をやってもらったりしています。将来は現地のデザイナーも育てていきたいですね」

独自の植林活動から生まれた、ユーカリのカトラリー

ミャンマーでの植林活動には日本からの寄付も活かされています。

そんな中で、2017年から斉藤さんたちが取り組んでいるのが「ミャンマーの森づくりプロジェクト」と名付けた植林活動。地元の学校やお寺の敷地を活用し、現地の人たちと協力して果樹や木工用の木を育てています。

とくに斉藤さんが木工用素材として期待しているのはユーカリやマレー花梨。木質がしっかりと硬いうえに、熱帯雨林に適し、生育が早いところが魅力です。

ハニーマザーで新たに扱うようになったデザートスプーンやフォーク、バターナイフなども、このユーカリ製。落ち着いたブラウンの色味と、ピシッとエッジの立った仕上がりが高級感を漂わせます。

細かなところまで丁寧に仕上げられたカトラリー。触れるたびに心満たされます

日本では軍事政権のイメージが先行しているミャンマー。そこに暮らす人のリアルな姿を私たちが感じられる機会は決して多くはありませんが、このカトラリーを使うことで、少しだけ現地に思いを馳せ、その自立支援に一票を投じたい、そんな気がします。

「もともと手先の器用な人たちですし、彼らの努力もあって、かなりいいものができるようになりました。この木工品を通じて、日本の方々にミャンマーに興味を持ってもらいたい。その興味が、支援につながっていくと思うんですよね」

齋藤さんと現地の方々の絆から生まれた、特別なカトラリー。あなたの食卓にも、いかがですか?

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この記事を書いた人

松本 幸

松本 幸

ハニーマザーのコミュニケーションディレクターを務めるフリーランスのコピーライター。神戸育ち大阪在住。著書に、2002-2006年のパリ在住経験から企画編集執筆した「パリ発キッチン物語おしゃべりな台所」がある。江戸落語と文楽が好き。週末菜園チャレンジ中。

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